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自筆証書遺言と公正証書遺言の保管方法と相続開始後の対応
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遺言書には、普通方式に分類される自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言があり、特別方式に分類される死亡危急者遺言や在船者遺言などがあります。後者は死亡の危機に瀕した場面などに作成する特別な遺言書で、基本的には①自筆証書遺言と②公正証書遺言のいずれかを選択することになります。
①と②は作成方法が大きく異なるうえに、保管方法についても違いがあります。当記事では両者の特徴を紹介し、保管方法について詳しく紹介していきます。
自筆証書遺言と公正証書遺言の作成方法
自筆証書遺言は、遺言者が1人で好きなときに作成できます。ただし民法に定められた要件は満たす必要があり、この要件を満たさないものは法的に無効になります。
《 自筆証書遺言の作成要件 》
- 遺言内容を含め、全文を手書きしないといけない。
- 手を支える程度のサポートを他人がすることは認められる。
- 添付する財産目録については手書きでなくても良い。
- 遺言書には、遺言書を作成した日付が特定できる記載が必要。
- 遺言書には、遺言者が特定できる氏名の記載が必要。
- 遺言書には、押印が必要。
- 実印は必須ではなく、認印でも有効。
一方、公正証書遺言は公証役場で作成する必要があり、遺言者が1人で作成することはできません。手続が必要で、費用も発生します。さらに証人の準備も必要です。
《 公正証書遺言の作成要件 》
- 証人を2人以上立ち会わせる。
- 公証人に遺言内容を伝えて筆記してもらう。
- 筆記した遺言内容を遺言者と証人に読み聞かせるか閲覧させる。
- 遺言者と証人、さらに公証人が署名押印する。
自筆証書遺言を保管する方法
自筆証書遺言は、保管方法について指定がありません。どのような方法で保管しても遺言書としての効力に問題はありません。
例えば次のような例を挙げることができます。
自筆証書遺言の保管方法 |
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自宅での保管 |
・机の引き出し、金庫の中など、遺言者の自宅で保管する。
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知人に預ける |
・信頼できる友人や家族などに保管を託す。
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専門家に預ける |
・司法書士などの法律の専門家に保管を託す。
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貸金庫に入れる |
・銀行などの貸金庫に遺言書を入れておく。
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法務局に預ける |
・自筆証書遺言保管制度に基づき法務局に保管を依頼する。
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それぞれのメリット・デメリットを踏まえて最適な方法を選択しましょう。
相続開始後の対応
遺言書を保管するときは、相続開始後のことも考える必要があります。人目につくような場所に放置していると紛失もしやすいですし、利害関係を持つ方による改ざんなどのリスクも高くなります。
一方で誰にも知らせず大事に保管していると相続開始後も見つからない可能性が高くなってしまいます。
そのため自宅での保管や貸金庫での保管をする場合は、誰か信頼できる人かつ利害関係を持たない人にその存在を知らせておくと良いです。そしてその方に、相続開始後は遺言書の存在を家族に知らせて欲しい旨を伝えておきましょう。
知人や専門家に預けている場合はこの点あまり心配する必要はないでしょう。ただし業務の一環で保管を行う専門家とは違い、友人や知人などに保管を託すのはリスクが大きいです。
最近だと法務局での保管制度が創設されましたので、こちらを利用することも検討してみましょう。費用はかかりますが、大きな金額ではありません。相続開始後、関係者に通知をしてくれるサービスもありますし、安全性と利便性を兼ね備えた保管方法といえます。
公正証書遺言を保管する方法
公正証書遺言の場合は遺言者が保管について考える必要はありません。なぜなら公正証書は原本を公証役場ですると決まっているからです。
なお、公正証書一般は20年間の保管期間が法令で定められていますが、遺言書については特別に作成から140年間(遺言者が亡くなってからは50年間)保管してもらえます。そのため期間については心配する必要はありません。
相続開始後の対応
公証役場で保管されているときは、法務局で保管する場合と違って相続開始後の通知がいきません。そのため相続開始後、自筆証書遺言が見つからないときは相続人等が一度公証役場で存在確認を行う必要があります。
1989年以降の公正証書遺言であれば遺言情報管理システムから調べることができます。作成した場所と同じ公証役場でなくても調べられますので、最寄りの公証役場にて申し出るといいです。
ただし、申し出を行う際は次の書類が必要です。
- 遺言者の死亡を証明する戸籍謄本または除籍謄本
- 申出人が相続人であることを証明する戸籍謄本
- 申出人の本人確認書類いずれか
- マイナンバーカード
- 顔写真が付いた運転免許証などの身分証明書
- 実印および印鑑登録証明書
書類準備に手間がかかりますが、これらは相続手続でも使う書類ですので結局は準備が必要です。司法書士に書類準備を任せることもできますので、遺産分割協議書の作成や相続登記などと併せて依頼しておくと良いでしょう。