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家族信託のメリット・デメリット

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家族信託は財産管理を行う方法の一つであり、財産を家族に託すことで管理・処分できます。
この記事では、家族信託のメリットやデメリットについて解説します。

家族信託とは

家族信託は、将来の財産管理や承継をスムーズに行うための方法であり、資産管理が必要な家族にとって重要な選択肢の一つです。
また、財産の所有権については、財産権は親が持ったまま「財産を管理運用する権利」だけを子どもに渡すことができます。
そのため、財産で不利益が生じた場合は、必ず財産権を保有している親に報告しなければなりません。
家族信託の契約は以下の3者間で行います。

  • 財産を管理する「受託者」
  • 財産を託す「委託者」
  • 財産の恩恵を受ける「受益者」


家族信託を利用すれば、委託者は生前中に自分の意志で財産管理の指示を出すことができるので老後も安心できる上に次世代に財産をスムーズに移せます。

家族信託のメリットとデメリット

家族信託のメリットやデメリットについて説明します。

家族信託のメリット

家族信託のメリットは以下の5つです。

  • 認知症による資産の凍結対策が可能
  • 柔軟な財産管理ができる
  • 相続時の負担軽減
  • 倒産隔離機能
  • 二次相続の対策


財産を保有している家族が認知症になると、金融機関は財産を守るために資産を凍結するので、凍結されると家族でも財産を動かせません。
そのため、一度凍結された財産を動かす場合は成年後見人制度を利用するしかなく、手続きなどが面倒になるので、認知症を懸念している場合は事前に家族信託を利用して財産を移しておくことで万が一に備えられます。

また、成年後見人制度は財産の維持管理を目的としており、本人が生活上で必要な支出があったときにのみ動かすことが認められています。
家族信託を利用すれば、事前に財産を移せるので契約範囲内であれば前述のような状況以外でも柔軟に財産を動かせます。
家族信託に託された財産は、借金やその他の財務問題から保護されるので経済的な安定が見込めます。

さらに、家族信託は一次相続だけでなく、その次の世代への相続計画も事前に準備できるので長期にわたる家族の資産計画が行えます。
家族信託は財産を自由に管理できるため、持ち主は自分の意志に基づいて、誰がいつ財産を受け取るかを決定できます。
そのため、特に大きな財産や複数の不動産を持つ家庭にとっては有益です。
また、信託を利用することで遺産分割の複雑さを避け、よりスムーズな財産の移転が可能となり、家族間の争いも少なくなることが期待されます。

家族信託のデメリット

家族信託のデメリットは主に以下の4つです。

  • 身上監護権がない
  • 財産管理を誰もやりたがらないことがある
  • 相続税対策にはならない
  • 遺留分侵害額請求をされる可能性がある


親の介護が必要になった場合、家族信託には身上監護権がないので、受託者である子どもが親の代理人として介護施設などへの入居契約を行うことはできません。
不動産などの家族信託の場合では、建屋の老朽化や固定資産税の納税義務など、維持管理が面倒だと感じるときは受託者を誰も引き受けようとしない可能性があります。
家族信託をしても不動産などの名義は子どもに移せても財産権は親にあり、家族信託をしたからといって直接的な節税効果はありません。
遺留分を持つ相続人がいる場合は、遺留分侵害額請求をされることもあるので注意してください。

家族信託の注意点とリスク

家族信託の注意点とリスクは主に以下の3つです。

  • 遺留分の侵害と法的リスク
  • 信託契約が無効になることがある
  • 初期費用と継続管理の負担

遺留分の侵害と法的リスク

家族信託は、相続財産の一部を信託として事前に移転することで、相続時の紛争を回避する効果が期待されます。
相続人の相続分を侵害していると遺留分の請求を受ける可能性があり、信託設立の意図が相続人を避けることにある場合は、法的な争いに発展するリスクが高まります。

信託契約が無効になることがある

信託契約の内容に誤りがある場合や、契約締結時に受託者や委託者の意思表示に問題があった場合、信託契約は無効になる可能性があります。
また、受託者が信託財産を不適切に管理した結果、本来の目的が達成されずトラブルになり、信託関係者間における訴訟問題に発展することもあり得るので注意してください。

初期費用と継続管理の負担

家族信託は契約書の作成や登記費用など、初期費用が発生します。
また、信託財産の管理や運用にはランニングコストがかかるので、信託の利益と比較してコストがかかり過ぎないか検討することも重要です。

まとめ

今回は、家族信託のメリットやデメリットについて解説しました。
家族信託は家族の財産管理を行う方法の一つであり、相続時の紛争を避けることや手続きがスムーズに行えます。
また、公的な相続登記と異なり、家族内で財産の移転ができる上に認知症や障害のある家族へのサポートも計画的に行えます。
家族信託を行うには専門的な知識が必要であり、登記の専門家である司法書士に相談することをおすすめします。