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家族信託において委託者が亡くなった際の対応について解説します
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家族信託は、認知症などへの備えとなる資産管理や相続対策に効果的な方法です。
財産を持つひとが信頼できる家族に資産を託し、その財産から利益を受けるひとのために、適切に管理・運用する仕組みが整えられています。
委託者・受託者・受益者の三者関係を正確に把握して適切に設計すれば、生前の財産管理と死後のスムーズな資産引継ぎを実現することができます。
本記事では、家族信託の基本と委託者死亡後の取り扱いについて解説します。
家族信託とは何か
家族信託とは、資産を持つひとが、信頼する家族に財産を委ねる仕組みです。
受益者の利益を第一に考え、資産の管理や運用だけでなく、処分まで行うことが可能です。
この制度を取り入れることで、認知症になった場合でも適切な財産管理が可能となります。
家族信託の仕組みに関する基礎知識
家族信託では、3つの立場(委託者・受託者・受益者)が生じます。
委託者は自分の財産を委ね、受託者は信託契約に沿って財産を管理し、受益者は信託財産から生まれる利益を受け取るひとのことです。
受益者は自由に選べますが、財産を預ける委託者自身が受益者になるケースが最も一般的です。
たとえば、親(委託者)が所有する資産を子ども(受託者)に任せ、親自身(受益者)のために管理してもらうという形が広く採用されています。
まったく関係がない第三者を受益者に指定すると、贈与税などの税金問題が発生する可能性があります。
そのため、親が自らのために財産管理を任せる、つまり委託する人物と利益を受ける人物が、同一人物となる家族信託の形式が一般的となっています。
家族信託が終了するのはいつか
家族信託は、委託者と受託者の間で交わす契約の一種です。
信託契約は、あらかじめ設定された条件に当てはまる状況が発生したときや、信託法で規定された終了事由が生じた際に終了します。
信託が終わりを迎える理由については、信託法の第163条に詳しく定められています。
- 信託の目的達成または達成不能となった場合
- 受託者が受益権全部を1年以上、自己の財産として保有し続けた場合
- 受託者不在の状態が続き、新受託者が就任しないまま1年が経過した場合
- 信託契約で事前に決めていた終了条件が発生した場合
- 信託契約の解除に合意した場合
家族信託において委託者が死亡したらどうなるのか
家族信託において委託者が亡くなった際、信託の継続か終了かは、信託契約内容によって決定されます。
家族信託の委託者の死亡により信託が終了する場合
家族信託においては、委託者が亡くなっても、基本的に信託は自動終了しません。
認知症への備えとして家族信託を活用するケースでは、主な目的は委託者の生前における財産管理です。
ゆえに、委託者と受益者を兼ねる方が亡くなった場合、家族信託を継続する必要性はあまり高くないと考えられます。
このような状況では、委託者兼受益者の死亡により信託を終了させるのが適切な選択といえるでしょう。
この対応を確実にするためには、最初の信託契約書に「委託者兼受益者の死亡により信託を終了する」という条件を明確に記載しておくことが重要です。
家族信託が終了せずに継続する場合
家族信託では、契約書に「委託者死亡時に信託契約は終了する」と明記されていれば、信託清算手続き完了後に終了します。
その一方で、委託者の死亡が終了理由として設定されていない場合には、亡くなった後も信託は継続し、受託者は変わらず財産管理の責任を担うことができます。
どのようなケースでも、委託者の死亡だけで家族信託が即座に消滅することはなく、契約で定めた内容に従って適切に進められるのが特徴的です。
委託者の地位を相続することができる
家族信託を、信託契約や信託宣言(自己信託)で設定した場合、委託者としての立場は相続人へ継承されます。
委託者が亡くなり、信託の清算フェーズに移行した場合でも、委託者としての立場は消えることなく続きます。
これは一般的な契約と同様に、信託契約の当事者としての役割が相続によって次世代へ引き継がれるということです。
信託契約についての契約書の中で、次に委託する人物をはっきりと指定しておかなかった場合、法定相続人が自動的にその役割を担うことになります。
このように契約関係が途切れることなく維持されるのが家族信託の重要な特徴といえます。
遺言信託では委託者の地位は相続できない
遺言信託では、原則として委託者の立場は相続されません(信託法第147条に規定)。
この制度は、委託者が遺言書内で信託設定の意思を明示し、その内容に基づいて成立します。
委託者の望みと相続人の思いが食い違う可能性があるため、相続人による信託財産への介入を防ぐ目的があります。
遺言信託の大きな特徴は、委託者が亡くなった時点で初めて効力が発生し、遺言書に記された指示内容に基づいて財産の管理が開始される点です。
委託者の地位について誰が相続するかを決められる
家族信託契約や自己信託においては、委託者の権限を特定の相続人に引き継がせることができる一方、遺言信託ではこれが基本的に引き継がれないという違いがあります。
家族信託契約の場合、委託者の立場を受け継ぐ人物をあらかじめ選んでおくことが可能です。
実務においては、最初の委託者が亡くなった後の委託者には、受益者や帰属権利者と同一人物を選ぶケースが多く見られます。
このような選択をするのは、異なる人物を指定すると権利関係が複雑化しやすく、不必要なトラブルや税金問題を回避するためです。
まとめ
家族信託とは、認知症対策や資産の円滑な承継を実現する仕組みです。
信頼できる家族に財産の管理を委ねる方法であり、委託者・受託者・受益者という関係性で構成されています。
委託者が亡くなった後は、契約内容に従って信託が継続または終了します。
なお、委託者の立場が引き継がれるかは信託の種類によって違いがあるため注意が必要です。
家族信託の設計には専門的な知識が必要なため、司法書士などの専門家への相談をおすすめします。